REVIEW
2013.05.28
人生の特等席
Introduction
野球のスカウトマンとして長年活躍してきたガス(クリント・イーストウッド)。
しかし、チームの首脳陣は年老いた彼の眼力を疑問視。今期のドラフトで有望選手をスカウトできなければ、解雇されるかもしれない。
私生活でも一人娘のミッキー(エイミー・アダムス)と心を通わすことができなくなっていた・・・。
Review
親子の葛藤が描かれる場合、ティーンエイジャー。もしくは、息子のパターンが多いのではないか。この作品の場合、弁護士で33歳の娘と頑固オヤジ。どちらも大人。無駄に言い争うことも少なく、お互いのことを思い合っているのに心が通わない。
本気で憎み合っている家族より、思い合っているからこそ上手くいかない家族のほうが圧倒的に多いのではないか。そこがリアルで良かった。
爽やかすぎるジャスティン・ティンバーレイクも良かったが、イーストウッドがここぞというところで放つあの魅力は何なのだろう。ポツリと呟くような台詞では特に惹き込まれる。
近年のイーストウッドは、主演と監督を兼ねるのが通例。しかし、この作品は久しぶりに俳優に徹した作品。観る前は少し残念に感じていたが、そんな必要は全くなかった。
本作が監督デビュー作となるロバート・ロレンツ監督は長年イーストウッドの助監督を勤めてきた人物。いうなれば愛弟子。師匠を演出した監督も弟子に全てを委ね、俳優に徹したイーストウッドも素敵だ。
人生の特等席とはどこなのか。愛する者が望む席なのか。自らが望む席なのか・・・。
愛する者に幸せになって欲しいと願うが故に、愛する者が望む席ではなく、自らが最良と思う席についてもらうことを望んでしまう。それが愛する者幸せでないとしてもそれが見えなくなってしまうのかも・・・。